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altnightの音楽用備忘録

渋さ知らズ / 渋星

渋星

渋星



渋さ知らズ - Naadam

Member

Daisuke Fuwa(不破大輔)
Hiroaki Katayama
Tetsu Hirosawa
Yoichiro Yoshida
Kunihiro Izumi
Keiko Komori
Hideki Tachibana
Arata Suzuki
Yoshiyuki Kawaguchi
Akira Kito
Yoichiro Kita
Mitsuhide Tatsumi
Daisuke Takaoka
Walti Bucheli
Aya Murodate
Keisuke Ota
Yuji Katsui
Kazuhisa Uchihashi
Hiroyuki Otsuka
Takayuki Kato
Sachiko Nakajima
Hiroshi Higo
Nobuyoshi Ino
Kumiko Takara
Tsunoken Yasuhiro
Yoshigaki MariSekine
Aki Ono
Ayako Sasaki

Eiichi Hayashi(林栄一)
Takayuki Kato

Sun Ra Guests::
Marshall Allen
Michael Ray
Elson Nascimento

Number

2004/01/18
1. Images
2. Naadam
3. Quasar
4. PA!
5. Akkan
6. Space Is The Place
7. In The Image of Images
8. 本多工務店のテーマ

情報

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サンラー・アーケストラのメンバー3名を迎えてスタジオで録音されたアルバム。 サンラーの代表曲2曲を含め「Naadam」「本多工務店のテーマ」も初めてのスタジオ収録。
大編成ライブでの演奏とは一味違った面を見せる作品となった。ハードかつアグレッシブなプログレ・ジャズとも呼べる演奏が聴ける。キングクリムゾンのファンには必聴!と言っておきます。

「なんかヤバいフリージャズがあるらしい」

渋さ知らズに出会ったのはたしか大学1年の半ばくらいだった。どこで聞いたかわすれたけど、なんか「日本のフリージャズで渋さ知らズはヤバい」というのを前々から聞いていた。それで Janis でなにかと借りたクッたものだ。なにがいいかもわからないけどとりあえず何枚か借りてみたけど、やっぱりヤバかった。ライブの映像がついている DVD もあるけど、今考えるとそんなもんかなと思えてしまうけれど、やっぱり当時は本当にショックだった。こんなわけのわからないものが、しかもフリージャズであるのかと!そして中でも好きなのがこの「渋星」なんだ。

渋さ知らズと Sun Ra

どちらもいちおうフリージャズに分類されるような音楽だけど、どちらもぜんぜん違う。渋さ知らズってもともと「演劇の劇伴だけど人がいないから呼びまくった」でああなって大きくなってとにかくゴリゴリおしてなんでもありの展開を見せるのが得意芸だ*1。それは規定となるテーマやベースラインやリズムさえ反復していればウワモノに乗ってるものはいくらフリーに暴れてもいいというものすごい話でもあるし、それがフジロックに乗ったりするのだからすごい。そして音楽だけにかぎらず MC や舞台美術やパフォーマーもあつまってどうこうするのだからイロモノ扱いされても仕方ないけど、しかしその異様なまでの濃さがこの渋さ知らズの魅力でもある。
対して Sun Ra は膨大な録音を残している(その数は100を超えているらしいが、自分は10枚程度だった気がする)が、基本的にはビックバンドを主体として、しかも貴重となっているのは実は極めて1920-30年代のビッグバンドサウンドだ。ある種伝統的なビッグバンドサウンドにフリージャズを悪魔融合させてしまって「わたしは土星人である」とか言い出してパフォーマンスしたり衣装がものすごかったりするのだから、それはそれでハチャメチャってやつである。
そうやって改めて考えると渋さ知らズと Sun Ra アーケストラがこのような形で合作が出るというのはむしろ必然だったのか……?おれには奇跡的なことだと思えるのだけど。*2

渋星はバランスがいい

全体の統一感やマスタリングがいいのもあるけど、なんといってもこのアルバムのコンセプトは Sun Ra だ。Sun Ra はまあ特定界隈では有名なフリージャズにいちおう分類されるがよくわからないミュージシャンだ。それとコラボしてどうこうというのだからもう胸熱でしかない。とはいってもコラボしてるからいいというよりは、それは結果としてバランスが自分好みだっただけではある。というかまあ Sun Ra のメンバーとコラボしても誰がなんなのかわからないし(バリトンサックスのパット・パトリックだけ名前覚えている気がするが、うろ覚え)。でもやっぱまず最初には「Space Is The Prace」がカバーされてるというのがもう胸熱でしかない。

渋さの楽曲もいいし、Sun Ra とのコラボもよく練りこまれてる

「Images」

「Images」は Sun Ra の楽曲ですね。つまりカバーという形になる。原曲もいいが、より重厚な形のアレンジで響きがすごい。アツい。

「Naadam」

冒頭の Youtube で貼った曲。「Naadam」自体は作曲は林栄一さんだという。なんか渋さの曲だと思ってたけどそうじゃなかった。アレンジとしてはとても渋さっぽくて重厚に何回もテーマを反復しながらゴリゴリ押してゆく。もうそれ自体が快感でいくらでも聴ける。アツい。ちなみにこの曲はほんともう名曲でいろんなバンドがいろんな編成で演奏している。自分もコピーして遊んだりね……。こんなに単純なテーマなのにここまで奥行き深くつくれるんだから、作曲ってすごいよなぁ。

「Space Is The Place」

Sun Ra の代表曲。原曲を知ってると、このカバーがいかに笑えるかがわかる。アツい。

「In The Image of Images」

渋さのオリジナルだけど、たぶん上記の Sun Ra の「Images」にインスパイアされたんだと思う。というかそういう曲名だし。というかもう曲名自体がもう遊びだし。内容もそんな感じだし。で、この曲のなにがいいかって、テーマ自体はそれこそ Images のイメージなんだけど、ソロ部分にはいるとものすごーーくスタンダードなジャズの進行、2-5的な進行だ。で、これってむしろ Sun Ra がよくやってたことなんだよね。Sun Ra ってすごい破茶目茶なイメージあるしそういうのがウリでもあるけど、実際のところこういうものすごくスタンダードな進行のジャズをビッグバンドでやってるような感じだ。そこらへんをうまく汲み取ったソロもして、テーマでも遊んで、ほんとこれはある意味このアルバムの一番の遊びどころなんだと思う。

「本田工務店のテーマ」

これはもう渋さの代表曲ですね。重厚に重ねていく、バラードではないが、なんというかものすごくジャンプ漫画の王道展開をいくようなプロレスの入場テーマみたい。アツいですね。

オチとかないけど

渋さ知らズを聴くなら個人的にはまずはこのアルバムをおすすめしたいな。初期のようなちょっと地味な感じでもなく、しかし最近のものすごいきらびやかな感じでもなく、なんかこうちょうどいい感じがしていい。あとは「Naadam」と「本田工務店のテーマ」が収録されているのがいいと思いますね。

*1:しかし不破大輔さん自体フェダインでそういうサウンドはやってるし、そういうのが好きなのかなぁとは思う

*2:ちなみに渋さ知らズ自体はわりとヨーロッパツアーはしていたりする

Black Sheep / 2

2

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blacksheep "The Voices of Time" (Ryuichi Yoshida)

Member

吉田隆一(バリトンサックス、バスクラリネット)
スガダイロー(ピアノ)
後藤篤(トロンボーン)

Number

2011/3/13
1. 時の声
2. 重力の記憶
3. 滅びの風
4. 星の街
5. 星の灯りは彼女の耳を照らす
6. にびいろの都市
7. 切り取られた空と回転する断片

情報

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吉田隆一(バリトンサックス、バスクラリネット)、スガダイロー(ピアノ)、後藤篤(トロンボーン)のトリオによる blacksheep の待望のセカンド・アルバム。よりグルーヴィーに、よりメロディアスに空間をねじ曲げる blacksheep 独自の世界がこれでもかというほど展開します! ジャケットはの羊の角を持つゴスロリ少女は気鋭のマンガ家・西島大介によるもの。可愛らしい羊子ちゃんの向こうにアツく燃えさかる blacksheep の音楽がパッケージされています。

恐れ多くも、師匠である

自分が大学2年のときジャズ研で「ちょっと行き詰ってきたしそろそろだれかに習いたいな」というときにバリサクでやっている人を探したら石森楽器で吉田隆一さんがやっていた。どうやら渋さ知らズ関連の人だ、ということでいってみたらこれはもう大正解で人生を変えるほどの人物だった。レッスンとしては基礎練もするけどいわゆるフリーキートーン(プギャーみたいなサックスの変な音)の出し方を教わったり、関連のよもやま雑談などもしていた。レッスン自体は1年でやめることになったけど、いまでも Twitter 経由で交流したり時折ライブ行ったりしている。恐縮ながらも弟子として認定されている。
そんな吉田隆一師匠の出演アルバムはけっこう聴いたけど、これはリーダー作だ。Black Sheep はけっこう好きなので何回かライブに行ったことがある。この2ndアルバムもスタジオ公開録音という形だったので当然見に行って演奏を聴いていた。

Black Sheep はまさに現代の最先端のフリージャズだ!

前作「Black Sheep」もよかったが、今回もいい。Black Sheep というバンド自体の構成がベースやドラムを抜いた変則的な編成で主にピアノのダイローさんがベースとコードを出しながら、吉田さんと後藤さんでハーモニーしている編成が多い。作曲も変拍子とまではいかないがちょっとトリッキーなつくりになっているが、何種類かのパターンを繰り返してやってそれとなく曲に戻して行ったり、またフリーキーに即興したりと、やはりこれはまさに現代のフリージャズだ。
アルバムとしてもキラーチューンやバラードめにおとしたりとラインナップもそろっているし、マスタリングもうまいので完成度が高く聴こえる。いいですね。

やっぱおれは「切り取られた空と回転する断片」がアツくてしかたないんだ

このアルバム冒頭にまず「時の声」がゴリっとしたナンバーでアツい。一定パターンを繰り返しながら少しずつフリーキーに即興が振りきれていき、最終的にはピアノのコードもゴージャスな感じで厚みを増す。まずやはりこれはアツい。
その後いくらか落ち着いた曲が何曲かか流れまたゴリっとした曲が流れ……ときたら今作のオリジナルとしては最後の、「にびいろの都市」がスローテンポで流れてくる。これだけ作曲は後藤厚さんで、また違った趣だ。フリー的というより、なんだか素朴な感覚が好きですね。
そして最後に待っているのは「切り取られた空と回転する断片」である。これは1stアルバムにもあるし、ライブでもほぼ毎回演奏されているし Black Sheep 初期の頃から演奏されていたキラーチューンだ。いくつかのリフパターンとテーマを繰り返した後、それぞれ即興パートにゆるやかに移行し、またテーマに戻ってくる。その流れも秀逸でとても自然に流れてゆく。フリーキーに暴れるパートももちろんあるけれど、それが単なる飛び道具になっているわけではく曲としての文脈、流れとして自然に挿入されている。この作編曲はさすがとしかいいようがない。
ちなみに1stアルバムでも収録されているし今回の2ndアルバムにも収録されているしライブでも頻繁に演奏される。もちろん曲の構造自体は変えていないから同じ曲なのだが、どれもやはり毎回違って聞こえて新鮮でいい。いいね。

オチとかないけど

ひいきとか言われてもいいから、Black Sheep 、おすすめです。現代の最先端のフリージャズのひとつのかたちがここにあります。1st もいいけどこの 2nd からはいったほうがどっちかというとキャッチーなのでいいかもね。

秋田昌美 / ノイズ・ウォー

ノイズ・ウォー―ノイズ・ミュージックとその展開

ノイズ・ウォー―ノイズ・ミュージックとその展開

あの Merzbow秋田昌美がノイズ本、アツい

日本におけるノイズミュージックの巨匠にして最高峰とも言える Merzbow、その秋田昌美自身が書き下ろしたノイズ本。秋田昌美さん自体はアングラカルチャーな著書を何冊か出版されていて1,2冊読んだけどさすがの造形だった。でも音楽について語った本はこの本しかない。5年前くらいから知ってはいたけれど、当時から Amazon 中古市場しかなかったし値段は1万以上はザラ*1、しかもクレジットカードもなかったので買えなかった。しかし今ではクレジットカードもあるし、なんだか値段も少しは落ち着いてきたので買って読んだ*2

読後感想









補足

なにがノイズであるかとかノイズミュージックの系譜をどこからとってくるかなど、またひとくくりにノイズミュージックとくくられるけど自裁はもうちょっと細分化されている。この本によるとロックやパンク的なインダストリアルな社会に対しての反抗のような形で出てくる SPK のようなものもあるし、現代音楽の文脈ではそれこそルイジ・ロッスオだ。で、現在に照らし合わせるとグリッチという手法の先駆者である Oval をあげられるだろうし、いわゆるジャパノイズとしてはロック・パンク・パフォーマンス的な文脈で非常階段というものある。非常階段からもっと音を追求しようとしたのがインキャパシタンツともある。グリッチの文脈からすると池田亮司の名前が出てきてもおかしくないだろうし、結果的にノイズ的とされることもある灰野敬二*3もいる。

自分にとってどういうノイズミュージックが好きで、また、演奏したいか

自分にとっては MerzbowMax/Msp で「音の内蔵をえぐり出す」というのも好きだし、Oval などのグリッチ手法も好きだ。あまり非常階段のようなロック的文脈であるとかパフォーマンスにはあまり興味がない*4灰野敬二はどれも好きだけど*5、結果的にノイズミュージックになってるのが好きだ。SPK とかあるいはクセナキスの録音もノイズとはいえるけど、しかし自分はそこまで好きでもないなぁという感じ。どうしても音そのものにこだわって聴いてしまうところがある。だからこそたとえばエレクトロニカのなかでもグリッチという手法を使っているものが好みであることが多い。
そしてじゃあ自分がどういうノイズミュージックをやりたいかというと、まあもう作品はある程度上げているが、ミニマル+ノイズというような感じだ。何回も録音して聴いているうちに自然とそうなっていった。ハウリングの音が大好きで、それを鳴らしていたい。それを一定の周期でずっとループしていれば良い。それを大音量で聴く。それはそれでストイックな方向に行き着いてしまっているけど、そんな感じだ*6。それが自分にとってのノイズミュージックだ。

*1:しかもコレクター価格だと現時点で64000円という価格までついている。すごすぎる。さすがである

*2:ちなみに買ってから新たにまた中古市場に2冊でたが、今度は40000円。さすがにそれは手が出せない。買ってよかった……

*3:灰野敬二さん自身はあくまでロックであるということにこだわっているらしいが

*4:そもそも音楽において文化背景を考えることは比較的少ない

*5:とはいうが、不失者よりはソロや共演の方が好きだ

*6:ちなみにニコ動とYoutube に作品は上げているけど、やっぱライブなり同人 CD を出したいとは思ってる